英語劇ドットコム

シカ・マッケンジーによる英語劇・英語演技についてのブログ

2015年度四大学英語劇大会(1)

第79回四大学英語劇大会@志木パルシティ、初日に拝見してまいりました。毎年各校素晴らしい作品を上演していらっしゃるので、とてもよい勉強になります。本年度の演目を初日の上演順にご紹介していきますね。
まずは立教大学さまの『Tribes』。先天性の聴覚障がいを持つBillyは家族から教えられた読唇術で人とのコミュニケーションをとっているが、ある日、手話を使う女性Sylviaに出会い、自分も手話を学び始める。驚く家族とBillyの間に葛藤が生まれ......というお話。

Tribes

Tribes


後半、Billyが手話で自分の思いを力強く表現する部分が圧巻。身体の動きによる表現はストレートに観客の心に伝わります。また、両親のように自分もいずれ聴覚を失なうのだと打ち明けるSylviaの語りもパワフルでした。この作品で意外と難しかったのは、そこに至るまでの家族たちのやりとりかもしれません。実際、この戯曲の出だしをお読みになると「え、これどう演じたらいいの?」と目がテンになって何度も何度も読み返したくなると思います(私はそう思いました)。
"ビリー、お前はみんなの唇の動きを見て言葉を理解するんだぞ、いいな"というようなセリフで始まってくれていたら演者にとって楽なのですが、それだと劇はとても安っぽい感じになってしまいます。だからこの作品でも父母や兄、姉の思いがはっきり言葉に出る部分は少なく、大半は実に普通の日常会話で展開されています。その中で家族の歴史や人間関係を観客に伝えなくてはならないのだから大変。演出する人にとっても演じる人にとっても手ごわく、またやりがいがあると言えるでしょう。
まるで素顔に見えるナチュラルメイクほど手間がかかり、難しいと言われるのと同じで、ていねいな解釈や緻密な計算が必要。この作品に限らず、現代劇の多くがそうですね。一見平穏な場面に見えるオープニングからクライマックスに向けていかに線路を敷いていくかが演技や演出の腕の見せ所です。初日のトップバッターとして舞台に立って下さった立教のみなさま、ありがとうございました!